Steve Arviso アーティストインタビュー


スティーブアルビソ

Interview with Navajo artist Steve Arviso

美しい石を魅きたたせたデザインと、ボリュームのあるシルバーワークが魅力的なスティーブアルビソのインディアンジュエリー。マライカでは2009年のイベントからの付き合いの馴染み深いアーティストです。10年目の節目に、改めてジュエリー作家としての考えをインタビューしました。
――スティーブアルビソ(以下、スティーブ)さんはコミュニティの村長をされていますよね。
色々とナバホ族の根本的な考え方というのも聞きたいのですが、まず初めにいつからジュエリーを作り始めたのでしょうか?
スティーブ:
高校を中退して軍隊に入って、帰ってきて2年してからだから1986年かな。姉がジュエリーを作ってたから、それを手伝い始めたのが始まりなんだ。
――そうなんですね。スティーブはサンシャインリーブスから紹介してもらったし二人はかなり仲がいいですけど、もともとサンシャインリーブスとは知り合いだったんですか?
スティーブ:
サンシャインは1985年とか84年から知っているよ。二人ともジュエリーを作り始める前。お互いに木材の運搬をするトラック運転手の仕事をしていてそこで知り合ったんだ。
サンシャインリーブスと作品
――そんなに古い知り合いだったんですね!
スティーブ:
そうだね。そこからお互いにシルバースミスになって、僕はトレーディングポストにワイヤーワークとかスタンプワークを使ったジュエリーを大量に作って売っていた。若かったしね、一日100個とか200個とか作ってたよ。

サンシャインもそうだし、ゲーリーとかダレルキャドマンもみんなが働くスタジオが近くにあったから、よく遊びに行ってサンシャインと一緒によくパーティしたよ(笑)

――そこでハリーモーガンとも出会うんですよね。
スティーブ:
そうだね。1992年ごろかな。自分のジュエリーの経歴はすでにあったんだけど、今の自分のスタイルの根本はすべてハリーモーガンから来ている。
ハリーモーガン/Harry Morgan
(American Indian Jewelry IIIより)
――ハリーモーガンの教えはどういったものがありましたか?
スティーブ:
「見て学ぶ」というのは結構知られているストーリーだよね。言葉で教わることはあまりなかった。ハリーは本当に細かいところに気を配る人だった。サンシャインと一緒にスタジオに行くと、いつも仕上げのやすりを時間をかけてやっていたから、一回いたずらでハリーがいつも使うやすりを隠して困らせたことがあるぐらいだよ。僕が細かいところに気を配るようになったのは、そのハリーの姿勢を受け継いでいるからだね。他の人が気にしない少しのゆがみとかが気になってしょうがないんだ。
――なるほどそうだったんですね。具体的にハリーモーガンから学んだことでスタイルはかなり変わったんですか?
スティーブ:
昔は銀が今の3分の1ぐらいの値段だったから、安いジュエリーもたくさん作れた。ハンドメイドでも大量にたくさん作れる、そういうジュエリーを自分は作っていたけど、ハリーは2000年までに自分のアーティストとしての名前をちゃんと確立しなさいと言ってくれた。もしかしたら銀の価格が上がることを見越していたのかもしれないし、市場がこうやって変わることが分かっていたのかもしれない。そのおかげで、大量生産のたくさん作るジュエリーから1点もののジュエリー、ターコイズにこだわっているオールドスタイルという今のジュエリーのスタイルになった。
――そうなんですか、すごいですね。以前日本で電車に乗ってるときにこの人ハリーモーガンみたいって言ってましたよね(笑) 私も会ってみたかったなぁ。
――他に、自分のジュエリーについて大切にしていることはありますか?
スティーブ:
ハリーはとても腕が良くて本当にいい仕事をするんだけど、いいターコイズを使わなかった。それを僕はすごく疑問に思っていたんだ。だから僕はターコイズにはこだわっている。

おかげでインディアンマーケットでは、いつもお客さんに「ここに行けば本当にいいターコイズに会えるから毎年来る」と言ってもらえるようになった。

――ターコイズの値段が上がっていく中でハイグレードターコイズを使い続けるのは大変ですよね?
スティーブ:
そうだね、値段はどうしても高くなってしまう。でも「質」は大事だよ。レストランでもなんでも、質がよければ自然にお客さんが来るし、ジュエリーも一緒で質が良ければ必ず見てくれる人がいる。
――なるほど、ではスティーブの尊敬する作家は?
スティーブ:
「自分が一番だからいない!」・・・というのは冗談で、技術を習ったという点ではハリーモーガンだね。でもアーティストそれぞれ得意な分野があるからたくさんのアーティストを尊敬しているし、人に対して尊敬の念を持つっていうことは大事だよ。
――なるほど、ジュエリーづくりで大切にしている思想みたいなものはありますか?
スティーブ:
うーん、「自分が満足する作品でなければ世に出さない」ということかな。自分が売りたくないって思うほどに満足した作品を作れた瞬間っていうのがアーティストであることの醍醐味だと思うんだ。自分が少しでも気になる所があったら、それは僕の名前で売ることに抵抗があるから誰が何と言おうとその商品は売らない。
――これでもいいかなというレベルでは売り物にはできないということですね。

マライカMITI青山店にて
――デモンストレーションなどで日本に行って、たくさんの日本人と知り合って、率直に、日本人のことをどう思いますか?
スティーブ:
僕はアメリカの外には日本にしか行ったことがないから比較しようがないんだけど、とても勤勉でよく働いて、ものの本質を見る人が多いなと思うよ。
――なるほど、じゃあナバホ族の人についてはどう思いますか?
スティーブ:
それはすごく難しい質問だね。ちょっと時間がほしいなぁ。僕はコミュニティの村長をやっていて、ナバホの政府の仕事もしたことがあるからすごくそれの返答は難しいね。。。。

やっぱり、怠惰だっていうのはあるね。それは日本人とたくさん出会っているから比較できるんだけど。

あとは言い方が難しいけど、「現実から取り残されている感じ」はあるかな。歴史的に見ても、ナバホ族というのは本当に賢くて強い部族なんだ。でもそれを活かせていない。頭のいい人たちは都会に出て行ってしまって、リザベーションに戻ってこない。もちろんそれは歴史的な問題だけどね。

――それはきっとどこの国にも言えることでしょうね。
スティーブ:
ジュエリーもそうだけど、「伝統を守ること」をずっと続けてきたから、外部との接触とかそれを盗まれるや公開することにすごく敏感で新しいことがなかなか受け入れられないんだ。
――そうなんですね。ソーシャルメディアも今は持っているアーティストが増えましたけど、それについてはどうですか?スティーブも最近インスタグラムを始めたんですよね。
スティーブ:
まだ抵抗があるし、僕ら世代の人々にはやっぱりいいイメージというのはない人が多いと思うんだけどね。昔はみんな貧乏で、みんなお金がない、お金持ちは白人だけという社会だったから、同じ部族の中で格差ができるとすぐに妬みになる。自分は村長という立場でもあるし、公に出ることというのはとても勇気がいることなんだ。でもアーティストとしてそういう社会を変えていくべきだとも思っている。

インスタグラムより @rvsojewelry

――伝わらないともったいないと私も思います。スティーブは仕事ということ対してどう思ってますか?スティーブにとっての仕事とは?
スティーブ:
僕にとっての仕事ね。(しばらく考えて)これは今の意見でいいの?年代と環境によって全然変わってくるからね。若い時はお金ありきだったけど。。。。
――今の考えで大丈夫です。
スティーブ:
仕事とは、一言で言うなら「家族の生活をよくするもの」だね。
僕にとっての一番の仕事は、雪かきをしたり、雨で流された土を埋め立てたり、家の周りを過ごしやすいようにきれいにすること。
次は、馬に牧草をあげて、馬の様子をチェックすること。
そして、子供たちや家族に必要なものをそろえること。

そのためにお金が必要なのであれば、そのためのお金を準備するためにジュエリーを売る必要がある。


カウボーイでもあるスティーブは馬具のジュエリーで受賞したことも
――アーロンアンダーソンのインタビューでも同じような答えが出てきました。子供たちが卒業したらジュエリーは作らないかもって言ってましたよ。
スティーブ:
そうなんだ、でもきっとアーロンは作り続けるだろうね(笑) 

例えば人生に満足してしまったら仕事なんてする必要ないんだよ。だから、仕事をしているということは何か改善したいと思っていることがあるということ。経済面でも、生活の面でもいいけど、だから人間は一生満足しちゃいけないんだと思うよ。

――なんだかかなり深い話になってきましたね。大切にしている人生の教訓はありますか?
スティーブ:
教訓ね。自分の信念というのは言葉にするのは難しいけど、僕は甥っ子が多いから、彼らにはいつも「Don’t do anything in half ass」っていうのはよく言うね。
――直訳すると、「何事も半ケツでやるな(笑)」つまり中途半端にやるなってことでしょうか。
スティーブ:
そう、何事も、やるなら全力できっちりとやる。中途半端にやるくらいなら、やらない。

例えば馬の世話。昨日甥っ子に、馬に水をあげてって言ったら、汚い水がまだ入ったドラム缶にきれいな水を入れるんだ。そんな中途半端なことをするんだったら、やらない方がいいって怒ったばっかりだよ。

――そのスピリットはスティーブのジュエリーにも表れてますね。
本当に興味深いお話、ありがとうございました!!

スティーブアルビソのジュエリーは見れば見るほど繊細で丁寧な仕事だと感心します。スピリットやこだわりを聞くと、作品を見る目が全く変わってきます。

スティーブアルビソの作品は、公式オンラインショップにて販売しています。
オンラインショップ/スティーブアルビソ

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マライカショップリスト

来日イベントを開催しました。動画でマライカ青山店でのイベントの模様をご覧になれます。