サントドミンゴ族のヒシネックレス

サントドミンゴ族の「ヒシ」

インディアンジュエリーの中でも人気の高い、サントドミンゴ族のヒシネックレス。ヒシのネックレスやブレスレットは、身に着けると驚くほどなめらかで、鮮やかで個性的なデザインが魅力的なインディアンジュエリーです。

ヒシ(Heishi)とは、貝殻や天然の鉱物で作られた小さなビーズ状のもののこと。語源はサントドミンゴ族の言語で『貝』の意味だといわれています。

サントドミンゴ族はニューメキシコ州の北側、サンタフェの近くに位置する、人口の少ないプエブロで、銀細工以前からの伝統的なシルバーなしのジュエリー作りを今でも行っている部族です。近くに流れるリオグランデ川の恵みから、貝や石を削って「ヒシ」と呼ばれるビーズを作り出し、それを紐に通したネックレス作りが有名です。

歴史的にはヒシのようなシェルネックレスを初めて作ったのは1万年程前、現在のアリゾナ州ツーソン周辺に住んでいたホホカム族だったといわれています。

彼らは現在のプエブロインディアンの祖先とされるアナサジ族と交易や交流を行っていました。現存する最も古い記録では紀元前6000年前ころの記録が残されているといわれています。

「ヒシ」のメイキング ~ カルヴィン・ロバトの工房にて

サントドミンゴ族の人気アーティスト、カルヴィンロバト(Calvin Lovato)の工房を訪ねました。

カルヴィンロバト(Calvin Lovato)
1958年サントドミンゴ生まれ。13歳頃から父の手伝いをしながらメイキングを学ぶ。ヒシの伝統技術を今も引き継ぐ数少ないアーティストの1人。

ヒシの主な材料となる鉱物、貝

  • ターコイズ(キングマンやネバダのターコイズ:ほとんどが加工用にスタビライズド加工されたもの)
  • サンゴ(アップルコーラル、バンブーコーラル、地中海産サンゴ等)
  • フォスフォシデライト(ピンク色の石:主に南米産)
  • ジェット
  • マザーオブパール
  • メロンシェル
  • オリーブシェル
  • アンバー
  • パイプストーン(主にミネソタ州産)
  • ピンシェル(メキシコアワビ貝)
  • サーペンタイン
  • ピンクシェル

材料からビーズを作ります

材料を手作業でそれぞれ板状にスライスし、さらに細長く切り分けます。

さらに細かく正方形に近い形に切り揃えます

中央に1つ1つドリルで穴を開けます

ビーズのパーツ『ヒシ』が出来上がりました!

ネックレスにしていきます

彼の作品に使われるヒシは、全て平行にカットされています。平行なヒシは、ネックレスにして身に付けた時、非常に滑らかなカーブを描くためです。ヒシに穴をあけ、ワイヤーに通した後、滑らかになるまで、何度も何度もグラインドをします。天然の素材を使用している為、作業の途中でビーズに亀裂が入ったり、欠けてしまう事も良くあるそうです。ですが、少しでもビーズに傷がつくと、手前までのビーズを全てワイヤーから外し、傷ついたものだけを取り除きます。ビーズに傷がつくたびに、これを何度でも繰り返し、完璧な状態のものだけが彼のネックレスに使われるのです。

ネックレスの配色を決め、ワイヤーに通します

グラインダーで円筒状になるように削っていきます

表面を研磨します

美しくなめらかになるまで研磨します

3本よりのナイロン紐に通し直します

最後に刻印代わりのメロンシェルを通します

完成

カルヴィンロバトの作品には、刻印の代わりに、正方形のメロンシェルのビーズが通されています。四方の角が東西南北を表しているそうです。

カルヴィンは決して急ぎません。これが特別なものなのだということは見てもらえば必ず理解してもらえる、そう信じているからです。決して焦らず、贅沢過ぎるほどの手間と時間をかけて作品を作り上げます。
日本のファンへのメッセージをリクエストしたところ、こんな宝物のような言葉をいただきました。

『こういう人間がいたという事を覚えておいて欲しい。
たとえ悲しいときでも、あなたの心が軽くなりますように。身につけるたびに嬉しさや喜びを思い出せますように。
その為に美しいものを生み出そうと努力した人間がいた事を。あなたの幸せを願った人間がいたという事を。』

カルヴィンはネックレスが仕上がると祭壇に置いて先祖に語りかけます。それを身に付けた人が幸せになるようにとお祈りを捧げているのです。

古い遺跡から発掘されたホホカム族のジュエリー(出典:Wikimedia Commons)

サントドミンゴ族カルヴィンロバトのヒシネックレスは、オンラインショップまたは全国のマライカで販売しています。ぜひお手に取ってご覧ください。